不動産の経営学~ファイブフォース分析で不動産賃貸業を考える~第1回

○ファイブフォース分析って?

 皆様こんにちは。たまには経営学のことも書いてみようと思いつきました。
 不動産賃貸業を経営されている方、または不動産投資をされている投資家の方はその成果を得るために日々いろいろなことを考え、実践されていることと思います。いろんな手法やノウハウを書籍、セミナー、経験談として得ることができます。今回は、経営学の観点から、不動産賃貸業、不動産投資を考えてみようと思います。
 皆さんファイブフォース分析という分析法を聞いたことがあるかもしれません。経営学において、最も有名な学者の一人であるマイケルポーターが提唱した分析のフレームワークです。ポーターはポジショニング派の学者で企業が利益を出すことのできるポジションにいることが重要であり、これが経営上のの決定的要因である、と考えました。また自社を取り巻く環境には 五つの力が働き、これらを分析することにより自社が身を置く業界の構造をぶんせきするフレームワークを提唱しました。このファイブフォースというのは、既にある競争相手との関係、買い手の交渉力、供給者の交渉力、新規参入者の脅威、代替品の脅威というものです。これを一つずつ見ていきましょう。きっと不動産賃貸業や不動産投資を行う上で、考えるヒントが見つかりそうです。

○競合との関係性を考えてみよう

 まず既にある競合との関係というのは、同じ業界における同業他社のことを言います。不動産賃貸業で言えば他の大家さんは、競合になり得ると言えます。物件を保有し運営している地域が異なっていたり、物件のタイプや築年数、顧客になりえる方が異なっていたりすれば直接的な競合とはならないと考えることができます。この直接的な競合になるか否かという点に関しては、不動産賃貸業というのは中長期的な事業計画が基本となりますので、注意して考察しなければなりません。

○建物は歳をとる

 どういうことかと言うと、建物は歳をとる。すなわち、人間と同じで1年で1つずつ築年数が増していくからです。例えば新築のマンションやアパートの賃貸業を考える時に、既に近隣に築10年いやそれ以上の築年数の物件がある場合でも、現時点で競合になるという可能性は非常に少ないといえます。ただし、これが今から20年経ったとしたらどうでしょうか。現在の新築マンションも20年経てば築20年のマンションとなります。また近隣にあった現在築10年のマンションは、20年後には築30年となります。この差というのは、お互いに建物が立地し続ける限りでは差は埋まらないので、部屋を借りる顧客つまり入居検討者にとっては新築と築10年の差は大きく感じますが、築20年と30年の差というのは小さいと考える人が増えてくると予想されます。すなわち築20年と30年という差であれば、今現時点で新築の時には競合となりえなかった競争相手が、20年後には既存の競合相手となり、競争を強いられる可能性を有していると考えられます。これらのことを考えた上で、築年数が同等の物件が周辺地域にないからといって、今後の事業計画において20年後30年後また40年後というところまで見据えて自社が勝ち続ける競争戦略を考えたほうがよさそうです。

○競合は増える可能性がある

 先の考察は、周辺地域において自社の物件が新しく、既存物件が古い場合の事例でした。別の事例として、自社の物件が新しくても、建築後に、さらに新しい物件が周辺に建築されていく場合はどうでしょうか。先例ではフォロワーつまり追いかける立場だったのが、追いかけられる立場にあります。すでに建築されている自らの物件は、その間取りの変更や減価償却が終わっていないまたは、使用可能な設備の更新など、市場の変化や競合への対応が難しい状況におかれます。このような情況において、後から建築されるマンション、アパートは新しく出現する競合となります。新しく競合が出現する情況は、非常に大きな脅威です。自分ではこの現象をコントロールするのは非常に困難だからです。

○競合を知り、自社を知る

 自社物件の立地するエリア内に、他にどのような賃貸物件が存在するかを知り、それらがどのような条件で募集しているのか、どのような設備があるのかなど把握することで、おのずと自社がとる戦略は見えてきます。競争における取れる作戦は意外と限定されているからです。
 いかがでしたでしょうか。次回は別のフォースについても考えてみたいと思います。お楽しみに!